この記事は2023年春の旅行記part6です。
長崎駅を出発し佐賀県を通らないルートで熊本駅まで行きました。
長崎から熊本に行く場合、陸上交通を利用すると必ず佐賀県を経由することになり、少々遠回りです。一方、船を使って有明海を横断すればダイレクトに熊本へ行けます。
今回は多比良(たいら)港~長洲(ながす)港を結んでいる有明フェリーを利用しました。
※以下ダイヤ・運賃などの情報は、記事投稿時(2023年12月)のものです。変更されている場合がありますので、ご旅行の前に各社の公式サイトでご確認ください。
前回:長崎観光:浦上駅から徒歩で山王神社と平和公園周辺を巡る
ルート詳細
今回のルートはJRの在来線普通列車、島原鉄道、有明フェリーを組み合わせたものです。
- 長崎駅~諫早駅:JR長崎本線
- 諫早駅~多比良駅:島原鉄道
- 多比良駅~多比良港:徒歩(約700m)
- 多比良港~長洲港:有明フェリー
- 長洲港~長洲駅:徒歩(約2km)
- 長洲駅~熊本駅:JR鹿児島本線
船と列車の接続にもよりますが、所要時間は4~5時間くらい。運賃合計は2,880円です。
有明フェリーは歩いて乗船する場合予約が不要。したがって、このルートの乗り物は全て予約なしでOKです。途中で面白そうなものを見つけたら気軽に旅程を変更できます。
(ちなみに車両は予約可能ですが、予約しなくても先着順で乗れるそうです)
次に、長崎から熊本にJRで行く一般的なルートですが、以下のような感じになります。
- 長崎駅~武雄温泉駅:西九州新幹線
- 武雄温泉駅~新鳥栖駅:在来線特急
- 新鳥栖駅~熊本駅:九州新幹線
船ルートは新幹線ルートに比べて距離が短いものの、所要時間では負けます。船ルートは接続が良い場合でも約4時間。新幹線は約2時間です。
ただ、値段は船ルートの方が圧倒的に安いですね。割引切符を使わない通常運賃でも3,000円未満というのは魅力的。
新幹線ルートは自由席でも8,310円します。また、高速バスは4,200円なので、船はそれよりも安い。
時間に余裕があり、移動自体を観光として楽しめる人には船ルートがおすすめです。複数回の乗り換えと徒歩移動を面倒だと考えるか、面白いと考えるかによって評価が変わるでしょう。
単純に熊本に行きたいだけなら高速バスの方が良いかもしれません。乗り換え不要ですし、値段と楽さのバランスが取れていると思います。所要時間は船ルートより少し短い程度(ギリギリ4時間未満)ですけどね。
なお、船で熊本へ行くルートは他にもあります。島原鉄道の終点、島原港駅まで行って、島原港~熊本港を「熊本フェリー」または「九商フェリー」で渡ることも可能。
筆者は最初このルートで検討していました。しかし、熊本港と熊本駅が離れていて、バスに30分くらい乗る必要があることがわかったので選択肢から外しました。
多比良~長洲ルートは駅から港へ徒歩で移動できる点が魅力です。船の便数も多めで、1時間に1本は出ているので使いやすい。(※ダイヤは2種類あり、時期によって変わるので注意)
ちなみに長崎県から熊本県に行く船のルートはまだ他にもあります(口之津~鬼池、茂木~富岡)
ただ、熊本市が目的の場合は遠回りになるので使う意味はないでしょう。天草地方に行くなら便利そう。
あと、島原~三池(福岡県大牟田市)という航路もありますが、これも熊本行きには遠回りです。
長崎駅~諫早(JR長崎本線)
さて、ここからは実際に船ルートで移動してみた記録です。
朝5時前に起きてホテルをチェックアウト。JR長崎駅に向かいます。
駅に入りました。流石にこの時間だと全然人がいないですね。
長崎から諫早は、SUGOCA(ICカード)のエリアに収まっています。切符を買わずに、SuicaやPASMOなどでタッチして入場が可能。
下の写真の発車標を見ると、佐世保行きの発車時刻が一番早いですが、諫早駅の到着時刻はこの中で一番遅くなります。
旧線(長与)経由なので遠回りになるせいですね。出るのが一番遅い6:00発諫早行(市布経由)の方が先に着くというのは意外な感じ。
間違って佐世保行きに乗りそうになりましたが、直前で気がついてホームを移動。5:48発普通諫早行きに乗りました。
車両は前日も乗ったYC1系気動車。ディーゼルエンジンを積んでいるけど発電に使うだけで、モーターを回して走るやつです。
他の乗客がいなかったので車内の写真が撮り放題でした。デザインは流石JR九州という感じでお洒落ですが、ほぼロングシートなんですね。
ボックスシートは車端部のみ。
短距離利用ならいいけど長距離乗るのはちょっと辛いかも。
個人的には転換クロスシートのほうが好きですが、最近は採用が減っている気がします。全国的に新車はロングシートばかりで悲しくなります。
転換クロスシート車を積極的に入れているJR西日本でさえ、紀勢本線の227系はロングシートでしたし。
最近のロングシート推しは「快適性が欲しければ課金しろ」という鉄道会社からのメッセージでしょうか。普通列車は短編成の詰め込み仕様にして、新幹線や特急に誘導したほうが儲かりますからね。
通勤列車に有料座席を設置する例も増えてますし、値段なりのサービスしか提供しない傾向は強まっていきそう。パンデミック以降、鉄道会社の経営に余裕がなくなっているのは事実ですからねぇ……。
今回は貴重なボックスシートに座らせてもらいましたよ。床にはQRコードみたいな模様が並んでいます。
読み取ることはできないようです。ただの模様ってことか……。
外が明るくなってきました。
長崎駅出発後、約30分で諫早駅に到着です。
下車して改札を出ましょう。ここからしばらくJR線とはお別れです。
諫早駅~多比良駅(島原鉄道)
JRの改札を出たら左に曲がり、エスカレーターへ。
1つ目のエスカレーターから下りたらそのまま直進して、2つ目のエスカレーターに乗ると島原鉄道の諫早駅に着きます。
ちなみに筆者はルートを間違えました。1つ目のエスカレーターを下りた後、すぐ隣のやつで一番下の階まで行ってしまった……。
短いエスカレーターで再度上がることに↓
スローラインきっぷ
島原鉄道の駅窓口で「雲仙・有明スローラインきっぷA」を購入しました。
これは、島原鉄道(諫早~多比良)と有明フェリー(多比良港~長洲港)の片道運賃がセットになったきっぷです。
通常1,640円のところが1,430円に割引されています。210円お得。
さらに有効期間は2日間で、途中下車も可能です(引き返すことはできません)。
西九州新幹線開業記念で発売されたものですが、販売期間が延長されており、2024年3月31日まで買えます。
販売場所は諫早駅窓口と有明フェリー船内売店。諫早駅には自動券売機がありますが、このきっぷは窓口での販売です。
ちなみに「雲仙・有明スローラインきっぷ」には B と C もあり、Bが諫早駅~熊本港、Cが諫早駅~三池港のルートになっています。
黄色い気動車に乗る
ホームには島原港行きの黄色い列車が停車中。
キハ2500形。地方の非電化路線ではおなじみ新潟鐵工所(現新潟トランシス)製の気動車です。
早めにホームに入ったのでボックスシートに座れました。
ただ、朝7時頃だったので通勤通学の客がどんどん乗り込んできて、車内はすぐに混雑しました。
諫早を発車後しばらくは市街地を走ります。
しばらくすると田園地帯に出ます。車窓には麦畑が広がっていました。広々としていて気持ちがいい。
吾妻駅を過ぎたあたりから諫早湾沿いを走ります。
肉眼では確認できませんが、対岸には長崎本線の線路が通っています。
諫早駅から約50分乗車して多比良駅に到着。
多比良駅には跨線橋がなく構内踏切で線路を渡ります。ローカル線ならではのスタイルで楽しいですが、遮断器、警報機がないので左右をしっかり確認する必要があります。
駅舎は新しいですね。2013年に改築されたとのこと。
多比良駅~多比良港(徒歩)
多比良駅から多比良港ターミナルは約700mの距離。徒歩9分くらいで着きます。
ルートを簡単に書いておきます。
駅舎を出て真っすぐ進み、横断歩道のある交差点を右折。道なりに進んで踏切を渡ります。
すぐ国道251号に突き当たるので左折。
橋を渡ると右手に国見郵便局が見えてきます。
郵便局のある側へ信号を渡り、郵便局の脇の道に進みます↓
この道を真っすぐ行くと多比良港ターミナルです。
多比良港~長洲港(有明フェリー)
上の写真の料金ゲートは自動車で乗船する人のためのものです。徒歩で来た人はスルーして奥のターミナルへ進みましょう。
一般客(徒歩利用者)用の入り口が分からず少し迷いましたが、「のりば」の文字を発見。そちらに進みます。
車用スロープの下をくぐって、売店・ターミナルの方へ。
ターミナル入口に到着です。
後でわかったのですが、筆者の通ったルートは遠回りでした。右側を通ればまっすぐターミナルに入れるそうです。
ターミナルに入ったら階段で2階へ上がりましょう。
一般客(徒歩利用者)用の券売機があります。なお、時間がない場合は船内売店でも買えるそうです。
筆者は「スローラインきっぷA」を購入済みなのでスルーして通路から乗船します。
下の写真は乗船後、通路を振り返ったところ。隣に自動車ようの橋がありますね。
船内には自販機やトイレがあるので安心。
天気がいいので展望デッキに出てみました。
乗り込んですぐ船は出港しました。
フェリーのデッキには特有の開放感があります。他の乗り物ではなかなか味わえない感覚。乗り換えがいらない高速バスのほうが楽だとは思いますが、観光で来ているなら船ルートもいいですよ。
フェリーに乗ったことがない人には一度乗ってこの感覚を体験してもらいたい。あと、この航路は内海を渡るので波が穏やかで船酔いしづらいと思います。
秋から春にかけてはカモメにエサやりができるそうです。ただ、今回はそれらしき鳥を見かけませんでした。もう暖かいので北に帰ってしまったのかな?
客室内にはソファー席のほか、バスに付いているような椅子席があります。あと、マッサージ機も設置されていますよ(有料)。
客室内ではフリーWi-Fiが使えます。
また、スマホの電波(ドコモ回線)は乗船中常に入っていました。陸地からあまり離れていないからでしょうかね? 以前南海フェリー(和歌山~徳島)に乗った時は途中で圏外になった記憶があります。
45分の乗船で長洲港に到着。こちらでは船の側面に一般客(徒歩利用者)用の橋が接続します。
係の人にきっぷを渡して下船しましょう。
長洲港~長洲駅(徒歩)
ターミナルのお土産屋の横を通って外に出ます。くまモンの絵が入ったお土産が色々売られていて、熊本に上陸したことが実感できました。
出入口付近には有明フェリーのマスコットキャラの像が立っています。多比良港にもいましたが、こちらのとは違うキャラだそうです。
長洲港は「アンちゃん」と「ユウユウくん」、多比良港は「シンちゃん」と「ララちゃん」。有明海に生息している小型のイルカ「スナメリ」がモデルとのことです。
さて、ここからJRの長洲駅まで歩くのですが、多比良の駅から港に比べ離れています。約2km、徒歩約30分の道のりです。
住宅街を抜ければ近道できそうでしたが、土地勘がないので迷いにくいルートを選びました。
港を出て国道501号に当たったら右折。しばらく501号を道なりに進みます。
長洲町役場などの案内看板(↓)が見えてきたら、交差点を役場の方へ曲がりましょう(左折)。
コスモ石油のガソリンスタンドも曲がる交差点の目印になります。
曲がった後は広い道をひたすら直進すれば長洲駅にぶつかります。距離はあるものの単純なルートなので迷う心配はなさそう。
長洲駅~熊本駅(JR鹿児島本線)
長洲駅は思ってたより大きな駅でした。無骨な造りで独特のかっこよさがあります。
階段を登りましょう。
跨線橋の上にきっぷ売り場や待合スペースがある橋上駅舎というスタイルです。
窓口に人がいますが、JRの職員ではなくシルバー人材センターから派遣された方で、きっぷの発券と清掃を行っているそうです。
ホームに入る際きっぷの確認はされませんでした。簡易委託駅という形態で、人はいるものの基本的には改札のない無人駅のような扱いだからだと思います。
簡易カードリーダーが設置されているので、ICカードで熊本まで行くこともできます。
ちなみに筆者は諫早駅で長洲~鹿児島中央の乗車券を購入済み。
ホームに沿って巨大な金魚のオブジェが設置されていました。
長洲町では江戸時代から金魚の養殖が行われていたらしく、現在でも日本有数の金魚生産地なのだそうです。
大和郡山は知っていたけど、長洲も金魚の町だったんですね。色々な所を旅すると思わぬ知識が得られるのが楽しい。
15分くらい待っていたら八代行きの普通列車がやってきました。車両は821系。長崎で乗ったYC1系に見た目が似ていますが、こっちは交流電車なので架線から電気を取って走ります。
扉は赤色。長崎のYC1系はオレンジでした。
車内デザインやシートの柄はYC1系と同じような感じだったと思います。結構混んでいたので中は撮れませんでした。
鹿児島本線のこのあたりは九州新幹線に並行しているものの、JRから経営分離されていません。それだけ利用者が多いということなのでしょうね。
椅子が空くことはなく熊本まで約40分間立ち乗りでした。
何はともあれ熊本駅に無事到着です。
まとめ
最後に今回使った列車と船の時刻を貼っておきます。
なお、これは2023年春時点のものです。時刻はダイヤ改正のほか、季節、曜日などによっても変わります。このまま使えるとは限りません。ご旅行の際は最新の時刻表をご確認ください。
長崎駅
05:48~06:19(JR長崎本線・諫早行)
諫早駅
06:52~07:41(島原鉄道・島原港行)
多比良駅
07:42~07:50(徒歩)
多比良港
08:00~08:45(有明フェリー)
長洲港
08:46~09:16(徒歩)
長洲駅
09:33~10:11(JR鹿児島本線・八代行)
熊本駅
朝は早かったですが接続がよく、少ない待ち時間で移動することができました。
なお、今回はきっぷ購入のため諫早駅で長めに乗り換え時間を取っています。乗り換え時間が6分でよければ、長崎発を30分近く遅らせることが可能でした。諫早から先は同じ便で行けます↓
長崎駅
06:15~06:46(快速シーサイドライナー・竹松行)
諫早駅
06:52~07:41(島原鉄道・島原港行)
多比良駅
今回の記事はここまで。次回はこの日の午後の鹿児島市内観光について書きます。