この記事は2024年1月の東京旅行part1です。時期的には以下の記事の続きです↓
18きっぷで東海道本線を進む
鳥羽から伊勢湾フェリー・豊鉄バス・豊橋鉄道渥美線を乗り継いで豊橋駅までやってきました。
ここから「青春18きっぷ」で東京へ向かいます。JR全線の普通列車(快速含む)に乗り放題のやつです。
↓(※写真は2023年春の分です)
今日の最終目的地は、予約している宿の最寄りの南千住駅です。まずは東海道本線の普通列車を乗り継いで東に進んでいきます。
「地獄」の静岡区間
豊橋駅(愛知県)を出た東海道本線上り列車は、10分ほど走ると静岡県に入ります。ここから先の静岡区間(豊橋~熱海)は、18きっぷ愛好家の間で「地獄」と呼ばれることもある区間です。
使われている車両の大半がオールロングシート。ほぼ各駅停車しか走っていない。利用者数に対して編成が短く、長時間立つことになるおそれがある。東西に長く、通り過ぎるのに3時間以上を要する。
……などなど、厳しい条件がそろっています。
ですが今回は幸運にも豊橋駅から転換クロスシート車に乗れました。ロングシートでないだけで大変さが軽減されます。
最近は静岡にも転換クロス車が増えていると聞きます。ありがたいことです。
筆者は運良く座れたものの、次々と乗客が乗り込んできて車内はギュウギュウ詰めに。やっぱり静岡区間は編成が足りてない気がする……。長くても大抵は6両ですし、最悪3両だったりします。
ちなみに東海道本線の岐阜~豊橋区間は、名鉄と並行しているためかサービスがいいです。8両編成の転換クロスシート車が基本で、追加料金不要の速達列車(特別快速、新快速)が走っています。
競合がいない区間になると、急に詰め込み仕様の普通列車のみですからねぇ。経済学で言われる独占の悪影響が実感できますよ。
JR的には中~長距離客を新幹線に誘導したほうが儲かるので、あえて在来線を不便にしている部分もあるのでしょう。短距離客はすぐ下りるので、詰め込みでもそこまで不満は出ないでしょうし。
ところで静岡区間には、18きっぷ愛好家の間でよく知られているテクニックがあります。終点まで乗らず途中駅で下りて、そこからの始発列車に乗り換えるというものです。
静岡区間には、静岡駅など主要駅が始発ではなく途中の比較的地味な駅から出ている列車があります。終点の主要駅まで行って乗り換えようと思ったら、満員の列車がやってきてゲンナリすることも……。
どのみち同じ列車に乗ることになるなら、手前で乗り換えておいたほうが始発で座りやすいのです。
そのような列車を調べるには乗換案内アプリより紙の時刻表が有利です。荷物になるので筆者は持ち運ぶのをやめましたが、時刻表アプリに課金する手もありますね。紙の時刻表をそのままデジタル化したようなサービスがあります。
さて、話を戻しましょう。この日に乗れた転換クロス車は豊橋からの便だけでした。その後はおなじみの国鉄型ロングシート車(211系)に。ただ、夜の帰宅ラッシュが終わった時間だったので混雑はマシでした。
18きっぷシーズンのこの区間は混雑が酷く、長時間立つこともあるので座れるだけでもありがたい。
熱海からグリーン車
熱海からはJR東日本のエリアに入ります。追加で課金して普通列車グリーン車に乗ることにしました。駅で食料を調達して車内で夕食にします。
なおグリーン車は2階建て車両なのですが、一部平屋の部分があります。2列8席しかないこじんまりとした空間で、個室感があって落ち着く~。
ちなみにもう一列多い平屋もあったはず。多分これが一番狭いタイプの平屋です。
平屋のメリットはいくつかありますが、個人的には荷物棚がある点を重視しています。2階建ての部分に乗ると、上下どちらの階でも荷物の置き場に困ります。隣が空いていれば置けますがすが、そうでなければ抱えるか足元に押し込むしかない。
このグリーン車は、基本的に荷物の少ない通勤客向けの設計だと思われます。旅行者は特急「踊り子」や新幹線に乗れということなのでしょう。
なお、2024年3月16日のダイヤ改正と同時に、普通列車グリーン料金が値上がりしました。その結果、熱海から東京まで乗る場合、新幹線や在来線特急料金と大して変わらない料金になっています。
Suicaを使わない通常料金(紙のきっぷ)では普通列車グリーン料金のほうが高いという逆転現象も発生。
この旅をした頃(2024年1月)は、まだ安かったんですよね。事前購入なら51km以上は平日1,000円、休日800円でした。51km以上ならどこまで乗ってもこの値段というのもありがたかった。
ダイヤ改正以降は101km以上の料金が新設され、通常料金1,810円、Suicaグリーン料金1,550円となりました。
1000円以下でどこまでも乗れるから課金していましたが、1550円を払う気にはなれません。座席のために1550円は高すぎる。グリーン車とはいえ所詮は普通列車なので課金しても速達性は変わらないですし、もう乗ることはないと思います。
ちなみにJR西日本の新快速Aシートは、どこまで乗っても840円。チケットレスなら600円です(※18きっぷの場合、チケットレスは不可)。しかも東日本のグリーン車と違い指定席です。
今回の値上げは長距離乗る客を減らすための策略にも見えます。特急と変わらない料金なら、わざわざ普通列車グリーン車に乗る意味がなくなります。長距離客を特急に誘導し、空いた席を短距離利用者に使わせたいのかも。
JRの立場からすると、長距離客一人より、短距離客複数人から小刻みに取ったほうが儲かるということなのかもしれません。今回の料金改定は単純な値上げではなく、短距離に関してはほぼ同額か安くなる場合もあります。
上野から常磐線
かつては東京止まりだった東海道線ですが、上野東京ライン開通後はそのまま北の方へ通り抜けられるようになりました。以前はいちいち京浜東北線・山手線に乗り換える必要があったので、ずいぶん便利になりました。
熱海から乗ってきた列車とは上野でお別れし、常磐線ホームに向かいます。なお、よく調べていなかったので、グリーン車付き車両(青帯)に乗り継げませんでした。
どうせなら最後までグリーンで行きたかった。ICカードのグリーン券は南千住まで買ってあったので追加課金不要で乗れたのにな。
仕方ないので取手止まりの直流専用の電車(黄緑帯のE231系)に乗り換えて南千住へ向かいます。
やっぱり東京は人が多い……。22時過ぎでも席は埋まっていました。ただ、上野から南千住は10分くらいなので立っても辛くはなかったです。
南千住駅から山谷の宿へ
今回は山谷(さんや)地区の安宿に泊まります。山谷は、大阪の西成(あいりん地区、釜ヶ崎)と並んで有名なドヤ街です。ドヤ街というのは、日雇い労働者向けの簡易宿所が多く集まっている街のことです。
山谷、西成、横浜の寿町が日本三大ドヤ街だそうです。
元々は労働者向けだった簡易宿所ですが、時代の流れとともに、バックパッカーをはじめとした観光客向けの宿へと転換が進んでいます。
ちなみに筆者は最近、東京や大阪に泊まるときはドヤ街にしています。普通の宿が高すぎるからですね。物価上昇やインバウンド客の急増で宿泊費が高騰した結果、ビジネスホテルチェーンでさえ気軽には泊まれなくなっている。
小さめの地方都市だと辛うじて4000円台で泊まれるビジネスホテルが残っていますが、大都市だと1万円オーバーは当たり前になりました。
ドヤ街がない都市に泊まる場合はネットカフェですね、「快活CLUB」とかの。とはいえ、ネットカフェ料金も以前よりは確実に上がってますけど。
では、南千住駅を出て宿に向かいましょう。駅南側にはJR貨物の駅があり、多数の線路が通っているので歩道橋を渡ります。
歩道橋を渡ったあとは大通りを道なりに進みます。
泪(なみだ)橋交差点に来ました(↓)
今は暗渠化されているので川や橋はありませんが、江戸時代にはこの近く(南千住駅南口あたり)に小塚原刑場があり、処刑前の罪人が最期に渡る橋がこのあたりに架かっていたそうです。
罪人や家族が泪を流したので泪橋と呼ばれるようになったとのこと。なんとも重い歴史のある地域なんですね。
刑場では江戸時代を通して20万人以上が処刑されたそうです。そういう歴史を知って夜に歩くとなんか怖い……。
まあ、今は大人気観光地になっている京都・鴨川の河原もかつては刑場で、三条大橋のたもとに首が晒されていたそうですからね。怖い歴史がある場所って、そこら中にあります。
人類の歴史上、戦争や殺戮、自然災害や事故は幾度となく発生しています。よって、昔から人が暮らしていた地域はだいたいどこも血塗られていると考えてよいでしょう。もし幽霊が実在するなら、どこに出てもおかしくはない。
鉄道関係でも悲惨な事故・事件が起こった現場があちこちにあります。このあたりだと、三河島駅の脱線衝突事故で多くの犠牲者が出ていますし、北千住駅と綾瀬駅の間では国鉄総裁が轢死体で発見された下山事件が起きています。
北海道の常紋トンネルには労働者の遺体が埋められていましたし、福井県の北陸トンネルの火災事故も悲惨でした。
いわくつきの場所はそこら中にあるので、幽霊にビビっていたらどこにも行けませんね。とはいえ、超自然的なものに対する畏敬の念を失うとクズになるという説もあるので、適度に怖がるのは悪くないのかも。
宿に到着
そんなこんなで今晩から宿泊する「ホテルヒカリ」に到着です。
南千住駅の南口からは約450m。ゆっくり歩いても10分あれば着くでしょう。実はさっきの交差点の写真にも建物が写っていました。左上に「HIKARI」の文字が光ってます。
この宿には以前泊まったことがありました。値段は安いですが、掃除が行き届いていて清潔。あと、フロントの人がとても親切。とても印象の良い宿だったのでまた泊まることにしました。
今回は一泊あたり3900円でした。
チェックインしてからエレベーターで部屋のある階へ。廊下にはドアがたくさん並んでいます。一部屋のサイズが小さいのでこういう面白い見た目になるんですね。
部屋のサイズですが、ドヤ街の宿の中ではやや広いほうだと思います。布団を敷いたらほとんどスペースが残らないような宿もあるのでね……。ただ普通のビジネスホテルよりは狭くバス・トイレは付いていません。
狭いですがエアコンや冷蔵庫など必要な設備は備えています。荷物を置ける棚や折りたたみ机があり、Wi-Fiも使用可。
部屋にバス・トイレがないのは弱点ですが、トイレと洗面所は各階にあるので特に不便さは感じませんでした。ちなみに洗面所には電子レンジ・給湯ポットがあります。
また、1Fには大浴場があるので、風呂に関しては狭いユニットバス付きの宿よりむしろ快適かも。
この宿はドヤ街初心者にもおすすめできると思います。コテコテの簡易宿所は少々ハードルが高いですが、ここはリノベーションされていて普通のビジネスホテル感覚で泊まれるからです。特にトイレが綺麗で好印象。
西成で昔ながらの簡易宿所に泊まったことがあったけど、やっぱり独特の雰囲気で、万人におすすめできる感じではなかったです。トイレなどの設備も昭和そのものだったので一部の人にはたまらないかもしれませんが……。
あと、この宿からは東京スカイツリーがよく見えました。直線距離で2km少々。川の向こうですが結構近く感じますね。
ライトアップがきれい。
おわりに
やはり物価高の東京において、4000円以下で個室に泊まれるのは魅力的。宣伝みたいな文章になってしまったけど案件などではないです。素直に好感を持ったので書きました。
ドヤ街というと怖いイメージがあって敬遠されがちですが、近年は気軽に泊まれる観光客向けの宿も増えています。山谷にはレビュー評価が高い安宿が他にもあるので、安く東京で泊まりたい方は検討してみてください。
治安も特に悪くはないですし、交通の便が良いのも魅力です。
ちなみにもっと安く泊まろうと思ったら、昔ながらの労働者向け簡易宿所かドミトリー、カプセルホテルになりますね。
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