徳島~室戸~高知を公共交通機関で巡る旅のパート7です。エリア内の鉄道、DMV、路線バスが乗り放題の「徳島・室戸・高知55フリーきっぷ」を使用しています。
徳島駅を出発し、JR牟岐線、阿佐海岸鉄道DMV、路線バスを乗り継ぎ高知県室戸市までやってきました。今回は室戸世界ジオパークセンターから路線バスに乗り、室戸青年大師像、御厨人窟(みくろど)、室戸岬遊歩道に訪れた様子をお届けします。
※旅行したのは投稿の約1年前の2025年8月上旬です。

地理院地図を加工して作成
前回⇩

室戸青年大師像へ
廃校水族館から戻ってきて自転車を返却。路線バスが来るまでの時間で、ジオパークセンターの展示を見られるだけ見ました。地質の話だけではなく、地元の歴史や文化も紹介されていてなかなか興味深かった。
本当は1時間くらいかけてゆっくり見たかったけど、室戸岬を観光して今日中に高知駅まで行かなくてはならないので仕方なし……。
あと、以前ジオパークセンターにあったジオカフェは室戸岬の方に移転しており、ここではジオアイスを食べられません。
安芸営業所行きのバスが来たので乗り込みます。

海の駅東洋町から乗ってきた車両に比べると新しい感じですね。手すりのポールがオレンジ色になっていて近代的。

バス乗車前は小雨でしたが 、発車する頃には土砂降りになりました。「自転車は室戸岬で返せるからそのまま乗っていったら?」という提案を断っておいてよかった……。危ないところでした。
運行しているのは高知東部交通。東洋町から乗ったバスと同じ会社です。このバスに乗れば乗り換えなしで奈半利駅や安芸駅まで行けます。まあまあな長距離便ですが、今回はすぐ降ります。
ジオパークセンターを出て約7分で「大師像前」バス停に到着。折りたたみ傘を開いて下車するも、風が強く一瞬でずぶ濡れになりました。雨の予報ではあったものの、ここまで天気が崩れるとは予想外。

なお、バス停名は「大師像前」ですが、像の真ん前にあるわけではなく、像の下の駐車場から100mくらい離れたところにあります。1分少々歩いて駐車場へ到着。

室戸青年大師像は、室戸岬で修行した青年時代の弘法大師空海をかたどった像で、建立されたのは1984年(昭和59年)
明星来影寺(みょうじょうらいえいじ)というお寺の境内にあります。
それにしても大きい。台座を含めて21mあるとのこと。丘の上の真っ白な像は遠くからでもよく目立ちます。

拝観料を払えば階段で上まで行って近くから拝むことも可能。金色の涅槃像や曼荼羅もあるそうです。

ただ、この時は大雨でそれどころじゃなかったので、下から拝んで去りました。次は晴れた日に来たい。高台になっているので海もよく見えるみたいです。
宿泊施設の相次ぐ閉鎖
ここで少し余談を挟みます。次の写真は、大師像の駐車場からバス停の方を振り返って撮影したものです。

右奥の白い建物は「ホテル明星(あけのほし)」で、「大師像前」バス停はこのホテルの真ん前にあります。

ホテル明星は、レストランや海洋深層水の露天風呂を備え、かつては阪神タイガース2軍がキャンプをする際の定宿にもなってたそうです。しかし、2023年10月に突如閉鎖され、翌年に運営会社は破産手続きを開始。
ここに限らず、コロナ禍以降、室戸岬周辺では宿泊施設の閉鎖や休館が相次いでいるらしい。感染症の流行で利用者が激減したことも大きな理由ですが、流行が落ち着いて利用客が戻っていても、経営を続けていくのが難しい別の理由があるようです。
まずは光熱水費の高騰と人件費の上昇。近年、世界的にインフレが進んでいますし、日本では少子高齢化によってずっと人手不足が続いています。
また、室戸岬という立地の関係で潮風による塩害や台風の影響を受けやすく、建物の老朽化が進みやすいという問題も。昭和に建てられた築30年~40年超えの建物で営業を続けるためには巨額の修繕費が必要になります。
単純にお客さんが来なくなったから廃業するというわけではなく、予約がしっかり入っていても、運営コストが大きいため資金が不足して経営が立ち行かなくなるようです。
相次ぐ閉鎖により、室戸岬周辺には団体で利用できる大きな宿泊施設がほとんど残っていません。そのため自治体は閉鎖された宿泊施設の再開に向けた協議や、新たな民間ホテルの誘致を進めているとのこと。どうなるか経過を見守りたいですね。
室戸岬の宿泊施設は豊かな自然に囲まれ、客室から絶景を楽しむこともできます。遠くから人を呼べる魅力は十分あると思います。
一方で、建物にとっては過酷な環境なので、維持管理のコストが課題。維持費をペイするために高級宿ばかりになってもらっても個人的には困りますが、そうならざるを得ないかも。
また、自然公園法により建物のデザインやサイズに規制がかかっていて、好き勝手に建てられる感じでもないようです。
アクセス改善の負の側面
室戸岬の宿泊施設が減っているのに新規開業やリニューアルが進まない原因として、交通アクセスの改善もありそうです。高規格道路の整備が進み、高知市内からの日帰り観光がどんどん簡単になっています。
高知東部自動車道は、筆者が室戸岬を訪問した2025年8月時点で、高知IC/JCTから芸西西ICまでの約28kmが開通済み。

芸西西ICから室戸岬までは一般道の国道55号しかなく、まだまだ遠いように見えますが、この区間は信号が少なく基本的に流れが良いので、距離の割には時間がかかりません。
高知東部自動車道が開通した結果、混雑する高知市、南国市、香南市の市街地を迂回できるようになったため、トータルの所要時間は大きく短縮されました。

高知市内から室戸岬まで2時間未満で楽に到達できるようになっています。かつては移動に時間がかかったため宿泊しないと観光しづらいエリアだった室戸も、現在では日帰り観光が容易です。
そのため、観光スポットや飲食店が多い高知市内に宿泊して、日帰りで室戸岬に足を伸ばす観光客も多いのだと思います。
高規格道路はさらに奈半利まで伸びる計画で、これからもさらに所要時間は短くなります(※奈半利から先は室戸岬へ行かず半島を横切って徳島の方へショートカットするルート)
交通インフラが便利になればみんながハッピーになる、というわけではないのが難しいところ。高速道路(高規格道路)ができて一般道沿いのドライブインや宿泊施設が潰れるという現象は、ずいぶん前から全国で起きています。
御厨人窟へ
さて、次は空海が修行で利用した洞窟の御厨人窟(みくろど)へ向かいます。青年大師像から約300mの距離で、歩いても4分くらいで着きます。国道には歩道があるので安心。
左手の道の向こうはすぐ海なので天気が良ければ絶景が見られそうですが、あいにくの大雨。海は薄いグレーでぱっとしないですね。

道沿いにはゴツゴツした立派な岩がそびえ立っています。この一帯はジオパークというだけあって、なにか特殊な岩なのかも知れませんが、予習してきていないので詳細はわかりません。

御厨人窟前に到着。

石碑の近くには葉が鋭く尖ったワイルドな植物が生えています。おそらくリュウゼツランの仲間。メキシコ原産ですが、室戸は一年を通して暖かい地域なので植えたら普通に野生化するようです。この植物が生えていると南国感が出ますね。
ここは御厨人窟として知られていますが、実は洞窟が2つ並んでいます。左側が有名な御厨人窟で、右側に神明窟というのがあります。御厨人窟は生活のための場所(居住スペース)で、神明窟が修行の場所だったと言われています。
洞窟の手前にある木の柵は、落石が酷く危険ということで立入禁止になっていた頃に作られたものです。

その後、入りたいという要望が多く寄せられた結果、洞窟の入口前に防護屋根が設置され、2019年4月末から再び立ち入ることができるようになったそうです。入口の納経所ではヘルメットの無料貸出が行われていて、安全のため着用が必要です。

まず御厨人窟に入ってみました。防護屋根の骨組みは立派で頑丈そうでしたが、屋根部分は鉄板などではなくネット状のものです。よって普通に雨は降ってきます。

脇には歴史を感じさせる「弘法大師修行之処」の石碑が立っています。自然石にそのまま字を掘ってる感じ。ネットちょっと調べたけど、いつ建てられたものかわかりませんでした。

御厨人窟は結構深くて暗くて荘厳な雰囲気。奥には立派な祭壇がありますが、その前で修行者らしき方がお経と真言を唱えていたので、写真撮影は遠慮しました。
洞内では音がよく反響します。ここの音は、環境省の「日本の音風景100選」に「室戸岬・御厨人窟の波音」として選ばれています。お経の声、滴る水の音、雨音、波音が複雑に混ざり合いなんとも言えない音になっていました。
西洋の古い教会などでもそうですが、こういう暗くて音がよく響く空間にいると不思議な気分になります。人知を越えた何かの存在を感じるような……?
確かにここは修行の場所としてふさわしいなと思いました。ただ、実際にはこっちは居住スペースで隣の神明窟が修業の場だったようですが。
振り返ると周りは闇。入口だけがくっきり明るく見えます。

天気が良ければ入口から空と海が綺麗に見えるようですが、悪天候のせいで景色は白っぽく、どこが海やらよくわからない感じでした。

空海が修行していた時代(西暦793年頃)は、洞窟を出てすぐ近くに海があったようです。そもそもこの洞窟は波によって削られてできたものらしい(海食洞)
その後、巨大地震などによって隆起(地面の上昇)が繰り返された結果、現在のような陸地ができ、海は遠ざかっています。洞窟付近は現在海面から10m近い標高だそうです。
空海の時代から現代までの約1200年は、人間の一生と比べると非常に長い時間ですが、地球誕生からの期間と比べると極めて短い時間です。その短い時間で地形が大きく変わるというのは珍しいことだそうです。
室戸の大地は1000年あたり1~2m隆起しているらしい。1年あたりに直すと約1~2mmです。これは世界的に見ても極めて速いスピードで、室戸がジオパークに認定されているのもそういう特殊な土地だからです。また、大きな地震があると一気に1m以上隆起することもあるとか。
昔はこの外が見渡す限り太平洋だったと想像するとロマンがありますね。若き日の空海(俗名:佐伯真魚)は、この洞窟から外を見た際、「空」と「海」だけが広がっている有り様に感銘を受け「空海」を自分の法名にしたと言われています。
さて、御厨人窟を出て隣の神明窟へ向かいます。上を見上げると断崖絶壁がすごい。

次の写真は神明窟の入り口付近ですが、岩がせり出していて見るからに崩れて落ちてきそうな雰囲気。

神明窟は入口が大きめ。外の光がしっかり入ってくるため、比較的明るかったです。また、御厨人窟と比べると奥行きはそこまでありませんでした。

雨の遊歩道
雨が弱くなることを期待して洞窟内をゆっくり見ていたものの、全く弱まる気配がないので出発。国語55号を南へ岬に向かって進みます。
500mくらい行くと駐車場があり、壁面には東大地震研究所の地殻変動観測所のドアが。

これはトンネルみたいになっているのでしょうか? どれくらい奥まで掘っているんだろう……。一般の人は中に入れないようです。
この駐車場のすぐ近くに、最御崎寺(ほつみさきじ)への登山口がありますが、あまりにも雨が強いので今回はパスします。室戸岬観光では定番のお寺なんですけどね。四国八十八箇所の第24番札所で、高知県(土佐)に入って最初の札所です。
駐車場の近くから遊歩道に入りました。木々が鬱蒼としていて、雨を多少防いでくれます。

もともと四国の植物はワイルドな感じのものが多いですが、室戸岬まで来るとさらに南国風のものが増え、強い生命力を感じます。雨でも雰囲気がいいですね。
この遊歩道周辺では、枝や幹から気根を垂らし岩に絡ませるアコウという木が見られます。岩に張り付いて樹高を低くしているため台風に強いらしい。

もっと進んで開けたところに出ると海が見えますが、天気の関係で全然青くはないのが残念。

ハマユウを発見⇩

ハマユウは温暖な地域の海岸沿いの砂浜や崖で見られる植物で、別名はハマオモト。
ハマオモトが自然に育つ北限を線で結ぶと、年平均気温が15℃、年最低気温平均が-3.5℃の場所を結んだ線とほぼぴったり重なります。これが「ハマオモト線」と呼ばれるものです。
この線より北に行くと寒すぎて、暖かい地域の植物が育ちにくくなるという目安になっています。
なお、四国は全体がハマオモト線の南にあります。種が海流に乗って広がるタイプの植物なので、基本的に海辺にしか生えていませんが、理屈の上では四国なら屋外栽培ができそうですね。
なおハマユウはヒガンバナ科の植物で、ヒガンバナと同じく株全体に毒があるようです。特に球根部分は濃く危険。誰も採って食べないと思いますが念のため。
御厨人窟の前に植わっていたリュウゼツランが遊歩道脇にもありました。やたらとでかいし、いっぱい生えてます。かっこいい植物ですが、葉のトゲが鋭く普通に皮膚を切りそうなのであまり近づかないほうがいいかも。

岩がゴロゴロしていて向こうは海だけ。最果て感のある景色が魅力的。背の低い植物ばかりが生えているのも海辺っぽくていいですね。

室戸岬の先端近くの月見が浜まで歩いてきました⇩

中秋の名月の時にはここの海から月が昇ってくるらしい。月見に最適なので、その名前が付いたとのこと。普段は観光客で賑わう場所ですが、流石に天気が悪いせいか全然人がいませんでした。
中岡慎太郎像
月見が浜から国道55号に戻り高知方面へ100mくらい行くと、山側に中岡慎太郎の像が立っています。

今回は悪天候のため行きませんでしたが、像が向いている方へ遊歩道を真っ直ぐ進むと灌頂が浜へ出られます。そこがおそらく室戸岬の先端に最も近い場所です。
なお、歴史好きの間では有名だと思いますが、中岡慎太郎は土佐藩出身の幕末の志士です。脱藩後、薩長同盟の締結のため奔走。さらに倒幕のための部隊「陸援隊」を作り隊長になりましたが、京都の近江屋で坂本龍馬とともに暗殺者に襲われ重症を負い、数日後に亡くなりました。
高知出身の偉人の一人ですね。像は昭和10年(西暦1935年)建立なので、2025年時点でちょうど90年経っていますが、かなり状態はよさそうです。

あと、像の横から展望台に登ることができると書いてありました。1枚目の写真の右上に写っている白い曲面の物体がたぶん展望台です。
ジオカフェ
ジオカフェは、中岡慎太郎像から50mくらい高知側にあります。もともとはジオパークセンターで営業されていましたが、2025年の3月に移転したそうです。
ホットケーキのベリートッピングと、海洋深層水のホットコーヒーを注文。先払い制。50円でバニラアイスをジオソフトに変更可能らしいのでお願いしました。

ジオソフトは土佐備長炭と室戸海洋深層水の塩が混ぜ込まれた黒っぽいソフトクリーム。もちろん単品で注文することも可能です。
味もいいし見た目もなかなか綺麗で楽しい気分になりました。
おわりに
室戸岬はワイルドな自然や歴史を感じられる素敵な場所ですが、大雨と強風の中で観光するのはなかなか大変でした。傘を差していても全身ベタベタに濡れて辛かった。
最御崎寺、灯台、展望台などまだまだ見どころがあるので次は天気が良い時に来たいです。あと、海岸から最御崎寺や展望台に行こうと思うと、結構長い時間をかけて坂や階段を登る必要があるので、晴れていても気温が高い日は厳しそう。
前もどこかに書いたような気がしますが、四国は意外と冬の気候が良く観光しやすいです。晴れの日が多く、日中は暖かく乾燥しているため、動き回って汗をかいてもベタつかず結構快適。
ただし、山間部は除きます。山間部は普通に雪が積もるし寒いです。路面凍結もあるので注意。冬に観光で訪れるなら高知県の室戸岬から足摺岬にかけての太平洋沿岸か、高知市内がおすすめですね。四国の中でも南の方なので特に暖かい。
今回はここまで。次回は路線バスと土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線を乗り継ぎ高知駅へ向かいます。
