徳島~室戸~高知を公共交通機関で巡る旅のパート4です。エリア内の鉄道、DMV、路線バスが乗り放題の「徳島・室戸・高知55フリーきっぷ」を使います。
徳島駅を出発しJR牟岐線でひたすら南下して、終点の阿波海南駅に到着しました。
ここから、線路と道路の両方を走れる乗り物DMV(デュアル・モード・ビークル)に乗車。高規格なローカル線の阿佐海岸鉄道・阿佐東線を走って高知県に入り、甲浦からバスモードになって海の駅東洋町へ向かいます。

なお、旅をしたのは2025年8月上旬です。前回の記事では、牟岐線の阿南~阿波海南間を取り上げました⇩

阿波海南駅を見学

さきほど反対方向(阿波海南文化村)へ行くDMVを見送りました。「道の駅宍喰温泉」行きのDMVがやってくるまで、阿波海南駅の設備を観察します。

分断された線路
JR牟岐線のホームを振り返ると、徳島から乗ってきた列車が停まっていて、折り返す準備をしています。

JRの阿波海南駅は牟岐線の終点ですが、ホーム1つと線路1本しかないシンプルな構造になっています。難しく言うと1面1線というやつです。棒線駅という言い方もありますね。
留置線などはなく、やってきた列車がそのまま引き返すことしかできない構造になっていますが、これには理由があります。
現在、阿波海南駅は牟岐線の終点で、DMVのモードチェンジ場所として注目されていますが、DMV導入までは単なる途中駅に過ぎませんでした。
以前は隣の海部駅までがJR四国の牟岐線で、海部駅から先が阿佐海岸鉄道の阿佐東線でした。
海部駅は高架駅なので、DMVが道路から乗り入れる設備を作るには大規模な工事が必要なうえ、駅周辺のスペースに余裕がないため用地買収や道路の移設が必要になり、コストが高くなります。
そこで、地上駅であり駅周辺のスペースが広く、国道にも隣接している阿波海南駅がモードチェンジ場所として選ばれたようです。

その結果、阿波海南~海部の区間は阿佐東線に編入され、牟岐線は少し短くなりました。
さらに、両路線は分断され、牟岐線の阿波海南駅の南側には車止めが設置されました。

※バス停付近から撮影した写真を拡大

※バス停付近から撮影した写真を拡大
かつて牟岐線と阿佐東線には直通列車が走っていましたが、今は物理的に走らせることができません。また、信号システムがDMV用に変更されたことで、阿佐東線を通常の鉄道車両が走ることもできなくなっています。
その代わり阿佐東線は道路とつながり、やろうと思えばバスモードで全国どこへでも行けるようになりました。実際、イベントでの展示のため、DMVが東京まで行ったこともあるようです(※徳島港~東京港はフェリー)
モードインターチェンジ
次にモードインターチェンジを観察します。モードインターチェンジというのは、DMVの鉄道モードとバスモードを切り替えるための場所です。

モードインターチェンジは、DMV車両の全長と比べかなり長くなっています。これは「バスから鉄道」と「鉄道からバス」への切り替えで、停車位置が違うことも関係しているようです。

「バスから鉄道」の場合、レールの上にぴったり鉄道用の車輪(鉄車輪)を下ろす必要があるので、繊細な位置合わせが必要になります。そのため、ガイドウェイが用意されています。

ガイドウェイは少しずつ狭くなっていき、ゴムタイヤが横から押されることで、自動的に正しい位置に誘導されます。DMVはガイドウェイにゴムタイヤをこすりつけるようにして定位置まで進みます。
いっぽう「鉄道からバス」の場合、鉄車輪がレールに乗っているため、狙った位置にバスのゴムタイヤを下ろすことは容易です。
また、多少ずれても、バスのタイヤは地面に着いてさえいれば走れます。そのため、ガイドウェイがないエリアでモードチェンジが行われているようです。
とはいえ、ガイドウェイのあるエリアで「鉄道からバス」のモードチェンジをやっても構わない気もしますね。なぜ場所を分けているのか気になります。
バスへチェンジする際には、ガイドウェイが、かえって邪魔になるのでしょうか? あるいは信号システムの関係なのか? 少し調べてみましたが詳細はわかりませんでした。
モードインターチェンジの先には、真新しい線路が続いています。DMV導入にあたり、以前の牟岐線のルートより少し東側に曲げて新設された線路です。

こういう敷きたての線路っていいですね~。なんかワクワクします。まあ、訪問時点で開業から4年近く経ってるので、敷きたてと言っていいのかわかりませんが……。
新しい線路なので当然ながらPCマクラギが採用されています。レールの継ぎ目の色が違うやつはFFUの合成マクラギっぽいですね。
ちなみに、PCマクラギ化されている路線でも、レールの継ぎ目の下だけ木のマクラギのことがあります。列車通過時に強い衝撃が来る場所なので、硬いPCマクラギより柔軟性と弾力性がある木などがいいらしい。
信号場とバス停
DMVが走る阿佐東線の線路と道路の境界は「阿波海南信号場」と呼ばれています。

信号場と言えば、単線区間において列車行き違いのために設けられた、客が乗降しない施設というイメージが個人的に強いですが、路線の分岐点としての信号場もあります。
分岐点としての信号場は、四国だと中村線と予土線の分岐点である「川奥信号場」が有名ですね。近くにループ線があるところです。
阿波海南信号場はおそらく、線路と道路の分岐点という扱いで信号場と呼ばれているのだと思います。現在DMVが運用されているのは阿佐東線だけなので、他にはない珍しいタイプの信号場と言えるでしょう。
また、DMVは阿波海南において、バスモードで客の乗降を行います。よってDMV側の乗降場所は「駅」ではなく「停留所」ということになります。
標識によると、停留所名は「阿波海南駅」や「阿波海南駅前」ではなくシンプルに「阿波海南」のようです。

よって厳密に言うと、阿佐海岸鉄道DMVの路線には、「阿波海南信号場」と「阿波海南停留所」はあるものの、「阿波海南駅」は存在しないということになります。
まあ、利用者がそんな細かいことを気にする必要はないですけどね。阿佐海岸鉄道のDMV時刻表にも「阿波海南駅」として書かれていますし。

国道とDMVの停留所の間には遮断器が設置され、一般の車両が誤って侵入しないよう対策されています。

阿波海南駅の近くには、日和佐駅にもあったドラッグセイムスが出店していました。あえて都市部ではない、人口が少なめの地域に出店していく戦略なのかもしれません。

記事執筆時点(2026年2月)において、セイムスは徳島県内に5店舗あり、この店舗から約1km離れたところに1店舗と、吉野川流域の阿波市と美馬市に1店舗ずつあるようです。どれも都市部ではないですね。
DMVに乗る
施設を見ながら待っていると、遮断器が上がりDMVが入ってきました。

さっき見送ったのと同じ色でした。阿波海南文化村から引き返してきたみたいですね。青色のこの車両は、DMV-1号「未来への波乗り」という名前だそうです。
この車両のほか、緑色のDMV-2号「すだちの風」と、赤色のDMV-3号「阿佐海岸維新」が走っています。
フリーきっぷでは予約不可

今回使用している「徳島・室戸・高知55フリーきっぷ」はDMVも乗り放題(※)ですが、座席の予約はできません。
どうしても予約したい場合は、高速バス予約サイト「発車オーライネット」で、別途正規運賃を支払う必要があります。そうすると「55フリーきっぷ」のこの区間での効力を使わないことになるので、少々もったいない気もしますね。
ちなみに阿波海南~海の駅東洋町の大人運賃は700円です(2026年2月現在)
(※乗り放題区間は、阿波海南文化村~阿波海南~海の駅東洋町~道の駅宍喰温泉間。土・日・祝日運行の室戸岬へ行く便には使えないので注意)
座席予約をしていなくても、席が開いていれば乗ることができますが、万が一満席の場合は、次の便を待つか並行する路線バスで先に進むことになります。
今回は事前に予約サイトで空席が多いのを確認していたものの、もし満席だったらどうしようと若干心配しながら待ちましたが、ガラガラでした。

今回乗ったのは阿波海南8:18発の便です。
公共交通利用の観光客がこの便に乗るためには、筆者のように早起きして5時台に徳島駅を出るか、徳島県南部に宿泊している必要があります。観光客には乗りづらい時間帯なので混まないのでしょう。
さらに、乗り込んだのはDMV目当てだと思われる観光客のみで、地元の人らしい乗客はいませんでした。
徳島新聞の記事によると、地元の人は並行する路線バスを利用しているらしい。
外部リンク⇩

2024年12月の記事ですが、DMVの通勤利用者は1人で、通学利用者は0だと書かれています。
これはおそらく定期券を使っている人数なので、地元の人の利用が全くないわけではないのでしょうが、公共交通としてはバスがメインで利用されているのでしょう。
DMVは座席数が18席と少ないですし、これは地域の足というより観光客向けのアトラクションという位置づけなのかな?
阿波海南を出発
予約している人は、運転士さんに座席番号と名前を伝えて乗り込みます。予約していない人は、行き先を伝えると、空きがある場合はその場で座席番号を教えてもらえます。
発車するとすぐモードインターチェンジに入り鉄道モードになります。

鉄道モードでは車両の頭(前)が上がり、床に傾斜がついた状態で走ります。

DMVは後ろのゴムタイヤでレールを蹴って走ります。鉄車輪は動力につながっておらず、レールから外れないようにガイドしたり、車両や乗客の重さを受け止める役割をしています。
シートはバス用にしてはかなり立派。サイズが大きめでクッション性もあり、座り心地は良好でした。包まれている感じで非常に気持ちがいい。
リクライニングはできないものの、上質さを感じさせてくれるシートですね。ホールド感があるおかげで、床が斜めになっていても全く違和感がありませんでした。

車体はバスでエンジン音もバスそのものですが、レールの上を走っているので乗り心地は鉄道に近く、不思議な感覚になります。
また、DMVは車輪の数が一般的な鉄道車両より少ない(前一軸、後一軸の4輪)ため、レールの継ぎ目を通る時の音(ジョイント音)が独特です。
ガタンゴトン……ガタンゴトン……にはならず、ガッタン……ガッタン……という感じ。
なお、動力伝達のため後ろのゴムタイヤがレールに触れていますが、これは鉄輪に比べ柔らかいため継ぎ目を通っても特に大きな音はしないようです。
阿波海南を出ると、まもなく高架線になり見晴らしが良くなります。

海部駅と昔の車両
国道55号と並行して海部川を渡り、

有名な町内(まちうち)トンネル(※山が削られコンクリの枠だけ残っている)を抜けると、海部駅に停車。
旧ホームとは別に、DMV用の低いホームが作られていました。

DMVは片側にしかドアがないため反対側にもホームがあり、2つのホームで1本の線路を挟むような形になっています。
かつての海部駅は列車の行き違いができる構造でしたが、現在のルール(技術評価委員会 の前提条件)ではDMVが線路上で行き違いをすることが認められていないため、線路1本のみの構造に変更されています。
使われなくなったもう1本の線路には、DMV化前に走っていた車両のASA-101「しおかぜ」が展示されています。


ASA-101は、2020年の引退時点で車齢が30年未満で、車体はサビに強いステンレス製なので、使おうと思えばそこから5~10年は使えそうでした。実際、ベース車両のTKT-8000形は、土佐くろしお鉄道中村・宿毛線で現役です。
とはいえ、中古で欲しいという鉄道会社はなかったのでしょう。最近は電気式気動車が主流になっています。突発的な事故などで車両が足りなくならない限り、わざわざ寿命が短い液体式の車両をもらおうとはならないのだと思います。
ついでに、海部駅がJRと阿佐海岸鉄道の乗り換え駅だった頃の写真を載せておきます。(※現在、旧ホームには入れなくなっています)

2010年3月撮影
以前はJRのキハ40系と阿佐海岸鉄道の車両が並ぶ光景が見られました⇩

2010年3月撮影
あと、旧ホームと窓枠を比べるとDMV車体の傾き具合がわかります。車内からでも頭が上がっているのが理解できます⇩

湾に沿って走る
海部駅は両端をトンネルに挟まれた立地です。前述のように町内トンネルはガワだけになっていますけどね。発車するとすぐ奥浦トンネルへ入ります。

単線の鉄道ならではの狭いトンネルにバスの車体で突っ込んでいくのは、アトラクション感があって楽しいです。
トンネルを出ると左手に湾が見えます。那佐湾(なさわん)というらしい。

近くに「ヘンロ小屋 第39号NASA」や「ふれあいの宿 遊遊NASA」という施設あり、アメリカ航空宇宙局と関係がありそうですが、実際には地名の那佐(なさ)から取られているようです。音の響きが同じなのでダジャレみたいな感じで付けたのでしょう。
はわい温泉(羽合温泉)とハワイの関係を思い出しました。ちなみに、はわい温泉がある鳥取県湯梨浜町はアメリカのハワイ州ハワイ郡と姉妹都市になっています。
那佐湾に沿った区間では短いトンネルが連続します。

地理院地図を利用

トンネルを出るたび少しずつ風景が変わるのが面白かったです。

湾に浮かぶ二子島も見えます。この湾と港は、古くから船の避難や補給に使われており、歴史的な事件の舞台にもなったとのこと。

阿佐東線は高架中心で作られ、基本的に高いところを走っています。そのため、ほとんど地上を走っていた牟岐線に比べて見晴らしが良く、海が見える区間も多いです。

また、建設時期が新しい区間だけあって、まっすぐに線路が引かれているため、地形に逆らわずに走る国道より少し近道になっています。国道と直角にクロスしていることからもわかりますね。

ちなみに、牟岐線の牟岐~海部間は比較的建設時期が新しいです。牟岐駅までは戦前に開業していましたが、海部駅まで開業したのは戦後しばらく経った1973年です。
また、阿佐東線の開業は1992年ですが、着工は1974年と開業の20年近く前です。つまり、牟岐線が海部まで開業した直後に阿佐東線を作り始めたということになります。
阿佐東線の工事は、1980年に国鉄再建法により凍結されましたが、その時点で海部~甲浦間の構造物はほぼ完成済みで、海部~宍喰間はレールも敷設されていたようです。
その後しばらくは列車が走ることなく放置されていた阿佐東線ですが、1988年に第三セクターの路線として運営されることが決定。1989年に工事を再開し3年後の1992年に開業しました。
現在は阿佐東線と呼ばれていますが、元々は阿佐線として甲浦駅からさらに南下し室戸岬を経由して後免駅に至る計画でした。
高知県側の後免~奈半利間は土佐くろしお鉄道として2002年に開業しましたが、室戸前後の区間の工事は凍結されたまま、工事が再開されることはありませんでした。
現在その区間は高知東部交通の路線バスで結ばれています。このバスについては次の記事で紹介します。
ローカル線ほど高規格な話
日本の在来線では、沿線人口の少ない地域に建設されたローカル線のほうが、利用者が多い幹線より高規格で作られているという、奇妙な逆転現象がしばしば見られます。
これは主に、建設された時期が関係しています。
需要の多い都市部や都市間の路線は戦前の早い時期(明治~大正)に作られましたが、地方の需要が少ない路線は後回しにされ、高度経済成長期(昭和中期)以降に作られました。
戦前の土木技術では、長いトンネルや巨大な橋を作るのが難しく、費用も莫大にかかりました。そのため、地形に沿って曲がりくねった線路を敷くしかありませんでした。
戦後の高度経済成長期には土木技術が大きく進歩し、長いトンネルや巨大な橋が比較的容易に建設できるようになりました。
結果として、ディーゼルカーが1両で走るようなローカル線ほど、高架で踏切がなく、直線的で勾配の緩い、高速走行可能な立派な路線になるという皮肉な結果になったのです。
今回乗っている阿佐東線がまさにそうですし、四国では土佐くろしお鉄道の各路線やJR予土線の一部区間もそんな感じです。一方で比較的利用者が多い予讃線や土讃線は線形が悪く、グネグネしています。
後知恵かもしれませんが、需要が極めて少ない路線を高規格で作るくらいなら、その資金で既存の幹線を線形改良し、高規格化したほうがよかったのではと思ってしまいます。
とはいえ、建設が新しい地方の高規格路線にも、有効活用されている例はあります。例えば、智頭急行智頭線や予讃線の新線(内子経由)は特急が高速走行するショートカットルートになり、大幅な時間短縮をもたらしました。
今でこそ純粋なローカル線になってしまった北越急行ほくほく線も、北陸新幹線開業前は特急「はくたか」が160km/hで走る、首都圏と富山・金沢を結ぶメインルートでしたね。
宍喰~甲浦
海沿いを高架とトンネルで走った後、少し内陸部へ進み宍喰駅へ到着。

ここは阿佐東線で唯一の有人駅だそうです。また、このDMVの行き先である道の駅宍喰温泉へは、この駅から歩いて行くこともできます(徒歩約10分)
DMVは、甲浦からバスモードになり国道経由で宍喰方面へ引き返すルートで走っています。
この駅も海部と同じように、旧ホームの端にDMV用ホームが増設されていました。


駅の西側(山側)は一面の田畑⇩ 開けていていい景色ですね。やはり高架だと見晴らしがいい。

宍喰駅を出発したDMVは宍喰川を渡ると、

長めのトンネル(第四宍喰トンネル)に入ります。

このトンネルの途中に徳島と高知の県境があります。トンネルを出るとすぐ阿佐東線の終点、甲浦駅の旧ホームが見えます。

DMV導入前は高架はここで途切れ、車止めが設置されていましたが、今は地上に下りるためのスロープが建設されています。

駅のホームは残っているものの立入禁止になっています。DMVの乗り降りは地上のバス停で行われます。

厳密には甲浦駅は鉄道駅として廃止済みで、現在は「甲浦信号場」になっています。
なお、この(旧)甲浦駅は、田畑が目立つ町外れにポツンと存在しており、線路が一本で行き違いができないシンプルな「棒線駅」のため、終着駅らしさはほとんどありません。
先ほど書いたように、阿佐東線は阿佐線の建設が凍結された際に、ほぼ完成していた徳島側の区間を、第三セクターとして開業させた路線です。甲浦駅は元々途中駅として計画・建設されたため、このような立地と構造になっているのです。
どうせなら、約2km先の東洋町役場のあたりまで建設したほうがキリが良かった気がしますが、わざわざ追加の予算を付けて作ろうとはならなかっのでしょうね。区間のほとんどがトンネルになるのでコストが高くなりそうですし。た
ちなみに、建設凍結当時はそこに役場はなかったようです。甲浦町と野根町が合併して東洋町になったものの、合併時に役場の場所で揉めて、数年交代で役場が甲浦と野根を行ったり来たりしていたらしい。1985年にやっと現在の位置に落ち着いたとのこと。
バスになって海の駅へ
現在、(旧)甲浦駅のホームに立ち入ることはできませんが、階段を登りホームの手前まで行くことは可能です。ホームの手前はモードチェンジを見学できるスペースになっています⇩

高架上で鉄道からバスへのモードチェンジを行います。太鼓の音が流れ、DMVの頭が少しずつ下がっていきます。

前のゴムタイヤの着地は非常にスムーズで衝撃がなかったものの、後ろの鉄輪の収納時には、カシャンと金属音がして上下の揺れがありました。これが少々不思議でした。重い金属部品がストッパーに当たり、衝撃が来たのでしょうか?
バスになったDMVはゴムタイヤでスロープを下ります。このスロープが結構な急勾配&急カーブで、アトラクションとして面白かったです。



地図で見てもカーブの急さがわかります⇩

地理院地図を加工して作成
あっという間にスロープを下り終え、甲浦バス停に停車。

ここにも一般の車が進入しないよう遮断器が設置されています。

バス停の前の待合所には売店があるそうです。

バス停のすぐ近くには甲浦八幡宮があります。

道路に出たDMVは右折し、先ほど走ってきた阿佐東線の高架をくぐります。次の写真はちょうど旧ホームがあるあたりを見上げています。

川沿いの細めの道を走り国道55号を目指します。

国道55号に突き当たると左折し、宍喰・阿波海南方面に進みます。

「慎太郎」や「海援隊」と名付けられた施設があるのを見ると、高知県に入ったんだなぁとしみじみ感じます⇩

巨大な津波避難タワーを通り過ぎるとすぐ、右手に海の駅東洋町の駐車場が現れます。

ここでDMVを下車。道の駅宍喰温泉へ走り去る姿を見送りました。

写真が全体的に白っぽく、ソフトフィルターを使ったみたいになっていますが、これはレンズの曇りのせいです。冷房が効いた車内で冷えたレンズが、暑くて湿度の高い外気に触れて結露しました。

海の駅と名乗っているだけあって、目の前がビーチ(白浜海水浴場)になっています。

ちなみにこの砂浜では、小正月(1月15日)に正月飾りなどを燃やす「左義長」という祭りが行われます。燃やしているところを見たことはないですが、竹や笹で作られた「ヤマ」が立っているのを見たことはあります。

2019年1月撮影
おわりに:DMVの魅力と課題
今回は阿波海南から海の駅東洋町までDMVに乗車しましたが、アトラクションとしては大満足でした。
モードチェンジのギミックや独特の乗り心地が楽しいですし、トンネルや急なスロープを走っている時の非日常感・冒険感がたまりません。
また、これはDMVというより阿佐東線の魅力ですが、建設が新しい高規格路線であるため高架区間が多く見晴らしが抜群です。海が見えるポイントも多く、天気が良い日に乗車すると絶景が楽しめるでしょう。
DMVの課題
一方で、公共交通機関として見ると課題もありそうです。純粋に地域の足として考えると、あまり実用性が高いシステムではないと感じました。
まず、阿佐東線に並行する区間の国道55号は基本的に渋滞しないですし、信号も少ないです。鉄道モードのDMVの営業最高速度は路線バスと変わらず、阿佐東線の路線延長も10km程度なので、所要時間の短縮効果はあまりありません。
さらに、ベースがマイクロバスであるため定員が少ないのも課題です。沿線人口が少ないとはいえ、18席しかないというのは、通勤通学時間帯に使うには心もとないと思いました。実際、地元の定期利用客の大半は国道を走る路線バスのほうを使っているようです。
阿佐東線は高いところを走っているため、津波などの災害に強いという点もメリットに挙げられますが、高架線を活用するなら線路を剥がしてBRT(バス高速輸送システム)にする方法もあります。
BRTの場合、DMVのような複雑な構造の車両を用意する必要がなく、レールやマクラギを使わないため保線の手間も減ります。よって、ランニングコストの点では安上がりになると思われます。
あと、DMVはせっかく道路と線路を走れる車両なのに、信号システムやホームの高さの関係で、鉄道モードでは阿佐東線しか走れない点がもったいないと感じました。JR牟岐線に乗り入れて徳島駅まで行くというような使い方ができません。
加えて、阿佐東線はDMV専用になり線路が分断されたため、JRの車両が乗り入れることもできません。技術的制約と規制の関係でDMV本来の柔軟性が発揮できていないのは残念です。
DMVが走っている地域へのアクセスの悪さも大きな課題ですね。DMVがいくら魅力的でも、乗りに行くためにはそれなりの気合と時間が必要です。
公共交通で訪れる場合、徳島からは普通列車で2時間以上かかり、高知方面からの路線バスは本数が極めて少ないです。高速道路が未整備のため、自家用車でのアクセスも時間がかかります。
もし牟岐線に臨時特急を走らせたり、観光バスを呼んだりして、大人数を連れてくることができたとしても、今度は18席しかないDMV3台ではさばききれないという問題が生じます。
DMVの価値
ただし、それらの課題があっても、DMVを導入したことには大きな意味があったと思います。短い阿佐東線を1両編成のディーゼルカーが往復していたかつての状態では、観光客を呼べず、人口減少でジリ貧になっていたことでしょう。
DMVという珍しい乗り物を導入したことで、筆者のような鉄道ファンや旅行者を呼び込むことができるようになりました。DMVは徳島県南部を訪れる大きな動機や目的になっています。
また、DMV単体では赤字だったとしても、道の駅や周辺施設に観光客を連れてくることができます。そのことによって大きな経済効果が得られ、地域活性化につながっているようです。
アクセスは良くないですが、他では味わえない珍しい体験ができるので、わざわざ乗りに行く価値は十分あると思いました。まだ乗っていない方は、ぜひ乗りに行ってみてください。
鉄道ファンではない方も、アトラクションとして楽しめると思います。国道55号をドライブやツーリングする際、道の駅などに車やバイクを止めて、休憩がてらDMV乗ってみるのもいいでしょう。
なお、フリーきっぷを使う場合を除き、事前に座席予約しておくことを強くおすすめします。遠路はるばる訪れたのに満席で乗れなかったら、悔やんでも悔やみきれません。予約に追加料金は不要(通常運賃のみでOK)なので安心です。
